製品の原産地表示は、国際貿易の現場において極めて重要な役割を果たしています。
これは単に消費者への情報提供にとどまらず、貿易コンプライアンス、国内産業の保護、そしてサプライチェーンの透明性確保に直結する要件です。
特に食品や医薬品のように健康や安全と関わる分野では、正確な原産国表示が消費者の信頼を支える基盤となります。
原産地表示とは、製品が製造・加工された国や地域を示す仕組みであり、包装やラベルに明記されます。
これを怠ると、輸入時に遅延や罰金、最悪の場合は貿易制限につながる恐れがあります。原産国は「どこで製品が完成したのか」を基準に決定され、関税分類の変更や実質的な加工の有無が判断材料となります。
再梱包やラベル貼付といった「最小限の工程」は原産地を変更する条件にはなりません。
また、国際的な貿易規制の多くは原産国を基準に設けられています。
不当廉売（アンチダンピング）関税、自由貿易協定に基づく特恵関税、輸入割当、さらには強制労働規制など、いずれも正しい原産地表示が前提となります。
各国政府は経済政策立案のため貿易統計を必要としており、輸入品の原産国表示は欠かせません。
輸入通関では「原産地証明書（COO）」が必須となります。
これは輸出国の商工会議所などが発行し、税関での手続きを支える重要文書です。
通常のCOOはアンチダンピングや輸入規制の判断に利用され、FTAに基づく「特恵COO」では関税の削減や免除が可能となります。
企業にとって、国や地域ごとに異なる規制に対応し、常に最新情報を把握することは大きな負担です。
しかし、違反によるリスクはコスト増や信用失墜につながるため、専門家の支援を得ながら積極的にコンプライアンス体制を整えることが不可欠です。
国際取引が複雑化する今こそ、原産地表示の正確性を確保することが競争力維持の鍵となっています。